リリース概要
睡眠時無呼吸症候群は非常に危険な病気です。最も効果的なシーパップ療法も、体への負担や違和感などで中止する患者が多くいます。そこで、新しい視点で開発したのが「横向きベルト」、簡便で効果が期待できます。今年6月に日本睡眠学会で試験結果を発表、9月に論文が掲載されましたので、お知らせいたします。
睡眠時無呼吸症候群(略称:SAS、サス)は、治療を行わないと生活習慣病が悪化します。
最も効果が高い治療法は、CPAP(シーパップ)療法です。中等度以上の場合、治療しないと9年後の生存率は63%で、非常に危険です。
にもかかわらず、CPAP療法を試みて体の負担が大きいなど何らかの理由で中止している患者は30%もおり、その他には効果的な治療法が少ないため、危険な状態に置かれたままです。
この状態をなんとかしたいとの思いから、患者の会であるSASネットは、治療を中止した仲間のお役にたてるかと「横向きベルト」を開発しました。
CPAP(シーパップ)療法は、機密性の高いマスクで鼻周辺を覆い固定します。マスクにポンプで空気を送り込みます。この圧力によりノドが広がり、呼吸が維持されます。効果は即効的です。
デメリットは、装着による違和感、空気圧の不快感、鼻粘膜の乾燥、マスクからの空気漏れによる目の刺激などがあります(調整により軽減することはできます)。
第一選択の治療法ですが、体の負担が大きく、治療を中止している患者が30%程度います。
次に、睡眠時無呼吸症候群のその他の治療法の一つが、横向きで寝るのを促す「体位療法」です。
上向きで寝ると、重力により舌の根(舌根)が気道に落ち込み、空気がスムーズに通らなくなるので無呼吸の程度が悪化します。これを、横向きになって寝るようにすると、舌根が落ち込まないので無呼吸の程度が軽くなります。
しかし、眠っている間の体の向きをコントロールするのは、容易ではありません。
この体位療法の難点に注目し、横向き寝を促す「横向きベルト」を研究開発しました。
効果の試験は、東京都新宿区の駒ヶ嶺医院睡眠呼吸センターで実施。結果は2019年6月27日開催の日本睡眠学会で報告し、論文は2019年9月25日発行の医学雑誌「睡眠医療」に掲載されました。
原著 「睡眠呼吸障害への体位変換装置の効果」(「睡眠医療」13 : 309-313, 2019/森山潔, 他)
(「睡眠医療」 http://www.lifesci.co.jp/sleep/outline/)
試験の方法と結果
対象者 周囲よりイビキを指摘されている人
被検者数 男性12名、女性2名、計14名
試験方法 1日目は横向きベルト装着無し、2日目はベルト装着あり。これを群間比較。
測定項目 上向き寝・横向き寝の時間、就寝時間、血中の酸素濃度
解析対象者 全く上向き時間がなかった1例(男性)を除く13例
結果:
- 上向き寝の時間は、横向きベルト装着により3時間22分から31分へと有意に減少し(p<0.004)、1/6以下となった。
- 横向き寝の時間は、横向きベルト装着により2時間42分から5時間55分へと有意に増加し(p<0.003)、2.2倍になった。
- 睡眠時無呼吸症候群が悪化すると、血液中の酸素濃度は低下する。横向きベルトを装着すると、低下度を示す3%ODIの値は有意に抑えられ、改善がみられた。低下度の中央値は、横向きベルト無しで13.6、横向きベルト装着で7.0(p<0.003)であった。
考察:
上記結果により、CPAP療法を試みたものの脱落してしまった体位依存性の睡眠時無呼吸症候群患者などに対し、横向きベルトの装着が新たな治療法になり得る可能性を示した。(CPAP療法とは、ポンプで加圧した空気を鼻から送り込んで気道を広げる治療法)
横向きベルトについて
体位センサー、バイブレーターの付いたベルトをお腹に巻いて布団に入り、スイッチをONにするだけ。上向き寝になるとセンサーが感知し、バイブレーターが弱く振動する。振動により無意識に横向きになるが、横向きになるとバイブレーターが止まる。
NPO法人睡眠時無呼吸症候群ネットワークについて
睡眠時無呼吸症候群の啓発、患者のサポートを主たる目的で2008年4月に設立した患者の会です。厚生労働省等の後援をいただきシンポジウムや公開市民講座等を開催するなど、患者のための活動を行っています。
横向きベルトの販売会社
バイオ薬品株式会社
https://biopharma.co.jp
(通信販売のみ)