※2020.6.23追記:本カンファレンスは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の緩和や世界的な経済再開の動きに鑑み、8月24日(月)、25日(火)の両日、実際の会場とオンライン展開のハイブリッド形式で開催することとなりました。
https://www.bg2c.net/
「BG2C FIN/SUM BB」がやってくる
金融庁と日本経済新聞社が、2016年より共催してきた国内最大級のFinTech & RegTechカンファレンス「FIN/SUM(フィンサム)」。
そのスピンオフイベントとして、ブロックチェーンをテーマにしたグローバルイベント「Blockchain Global Governance Conference -BG2C- FIN/SUM Blockchain & Business -FIN/SUM BB-」、通称「BG2C FIN/SUM BB」の開催が、このたび発表された。
令和2年3月9日〜10日の両日、東京・日本橋の「室町三井ホール&カンファレンス」で行われるという。LoveTech Mediaは昨年の「FIN/SUM 2019」に引き続き、メディアパートナーとしてセッション内容のレポート等をする予定だ。
なぜLoveTech Mediaが金融や規制といった領域のイベントを取り上げているの?とよく聞かれるのだが、それに対する回答としては、「私たち全員が“愛あるウェルビーイングな生活”を営む上で、この領域への理解と当事者意識こそが、最上流工程として必須だと考えている」からだ。
ポイントは「当事者意識」。社会OSの交換を行政府のみに任せていては、いつまでたってもトップダウン型の配給モデルにしかならず、多様できめ細かいニーズへの対応がますます後手に回ることとなる。対して一人ひとりが各々のペインポイントに参加型の姿勢で関わっていくことこそが、この国の未来をポジティブなものにしていくと確信している。そういう意味で、今回のカンファレンスのキーワードでもある「マルチステークホルダー・ガバナンス」は、まさに当メディアのテーマにドンピシャな内容なのである。
特に今回、政府(金融庁)がブロックチェーンをテーマにした本格的なグローバルカンファレンスを主催するのは初めてのこと。一体どのようなカンファレンスなのか。なぜ今、ブロックチェーンに注目するのか。参加にあたっての学びのポイントや、関連する昨年どのFIN/SUMセッションについて、本記事でご紹介する。
FIN/SUM 2019で発表された「ガバナンスフォーラム」構想
インターネット以来の発明と言われるブロックチェーン。この、枯れた暗号技術等をうまく活用した革新的な“発明”を取り巻く国際環境は、2019年に大きく前進したと言えるだろう(もちろん、捉え方は人それぞれだ)。ここでは、本カンファレンスの主催者であり、ブロックチェーン国際共同研究を推進してきた我が国の金融庁の動きを見ていく。
同庁は昨年3月に国内外の金融当局及び中央銀行、国内外の学会関係者等のメンバーからなる「ブロックチェーン・ラウンドテーブル」を開催したことを皮切りに、6月に福岡で開催された「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」では技術革新にかかるハイレベルセミナー「デジタル時代の未来」を実施。分散型金融システムにおけるガバナンス課題等が話し合われ、“マルチステークホルダー”を通じた新たなガバナンスの重要性についてG20の合意を得ることができた。
この過程で同庁は、自律分散型の技術の進展によって規制の効果が十分に及ばない状況が想定され、従来の金融規制に代わる新たなアプローチを開拓することが必要、との認識に至ったという。
そのような背景のもと、9月に「FIN/SUM」が開催される。4日間に及ぶカンファレンスのうち、3日目は金融庁主催シンポジウム「フィンテック・サミット 2019」として実施され、その冒頭において金融庁長官の遠藤俊英氏が講演した。
撮影:日本経済新聞社
「我々はこのFIN/SUMを、FinTech分野を中心として、技術的な論点を含め、世界最先端の議論をリードする場として位置づけております。
2020年春には、ブロックチェーン技術に基づく分散型金融システムの課題や今後のさらなる活用可能性等を議論する場として『ガバナンスフォーラム』を開催する予定です。分散型金融の新たなガバナンス体制構築に向けた議論を活発化させるプラットフォームとして期待してほしいと思います。」
ここで述べられた「ガバナンスフォーラム」こそが、今回実施される国際会議「BG2C FIN/SUM BB」というわけだ。
マルチステークホルダー・ガバナンスの必要性
今回のフォーラムでキーワードとなるのが、先述の「マルチステークホルダー」という考え方だ。
これは「マルチステークホルダー・プロセス」という、元々は1980年〜90年代にかけて「サステナブルな発展」への議論と文脈の中で発生したワードである。3者以上のステークホルダーが、対等な立場で参加・議論できる会議を通し、単体もしくは2者間では解決の難しい課題解決のために、合意形成などの意思疎通を図るプロセスとして以下5つの特徴を有したもの、と内閣府ホームページで紹介されている。
- 信頼関係の醸成
- 社会的な正当性
- 全体最適の追求
- 主体的行動の促進
- 学習する会議
出典:内閣府「マルチステークホルダー・プロセスの定義と特徴」
金融の世界では、これまでは政府が一定の規制(レギュレーション)を定め、健全な市場の維持等に取り組んできた。規制当局からすれば、中間金融制度を使って規制を展開する方が楽だったわけだ。しかし、FinTechのような存在が出てきたことで、このような中間機関のみに依存するのが難しくなってきており、それに代わる新しいガバナンスのあり方として提唱されているのが、この「マルチステークホルダー・ガバナンス」となる。
ことブロックチェーンのような新興技術は、中央集権型モデルの排除や透明性の確保、記録管理の迅速化といったメリットがある一方で、消費者保護が行き届いていないケースも多い。これに対する規制も、イノベーションを阻害しない形で進める必要があり、ダイナミックかつ繊細な議論のもとで策定されることが求められる。だからこそ、技術者や規制当局、アカデミア、金融機関など様々な立場のステークホルダーがオープンな場で議論した上で合意形成することこそが、進め方として望ましいというわけだ。
撮影:日本経済新聞社
ちなみに、慶應義塾大学大学院特任教授の鈴木茂哉氏(写真右)は、「FIN/SUM 2019」に設置されたパネルディスカッション「ブロックチェーン・エコノミーの新たな国際協調 ~マルチステークホルダー・ガバナンス」において、ブロックチェーンでのルールづくりの参考事例として、ICANN(※)を中心としたドメイン管理およびIPアドレスの標準化や割り当て管理におけるガバナンス体制を挙げていた。つまり、企業や民間団体など多様なステークホルダーが、転売目的のドメイン占有といった問題を、話し合いや投票といった意思決定プロセスによって対処していったというのだ。難易度が高い課題である分、面白い話である。本セッションについては、また別記事として当メディアでご紹介したいと思う。
※ICANN:Internet Corporation for Assigned Names and Numbersの略。ドメイン名、IPアドレス、プロトコル(ポート番号、パラメータ番号)、DNSルートネームサーバシステムを民間主導でグローバルに調整する目的で、1998年10月に米国で設立され、2015年に民営化した非営利法人(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンターより引用)
金融と非金融、実に幅広いセッションテーマ
撮影:日本経済新聞社
今回のメインテーマである「ブロックチェーン」は、「価値のインターネット」として暗号資産、デジタル通貨、セキュリティトークンなど分散型金融技術の中核をなすものだが、自立分散型の技術の進展に伴う国際ルールや規制については、まだ十分な議論がされていない状況にある。だからこそ本カンファレンスでは、様々なステークホルダーによる相互理解を深め、協調のあり方を探求するための中立な議論の土台構築を目指すという。
またブロックチェーン活用は、なにも金融領域だけに限った話ではない。貿易、サプライチェーン、ロジスティクスなどの様々な産業分野にも広がりをみせているのだ。
「BG2C FIN/SUM BB」では、前者の金融領域におけるセッションを「BG2Cセッション」として、後者の非金融領域における多様なビジネス活用事例セッションを「ビジネスセッション」として、それぞれ設置している。
そう考えると、扱うテーマは実に幅広い。以下はその一例である。(最新のセッション情報はこちらをご参照)
- プライバシー、AML、KYC
- アイデンティティと暗号鍵管理
- 金融多様化のためのマルチステークホルダープラットフォーム
- 分散型金融におけるガバナンスのアーキテクチャー設計
- 技術革新と新興市場(金融包摂)
- ブロックチェーンにおける保管、セキュリティ、規制
- ブロックチェーンの拡張性、相互運用
- STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の潜在力
- 法とブロックチェーン ※予定
産官学+技術者、国内外様々な要人が集まるディスカッションの場
FIN/SUM 2019で講演する麻生太郎氏
また、登壇者も豪華な顔ぶれだ。
ガバメントサイドからは、FIN/SUM 2019の金融庁シンポジウムでも講演した麻生太郎 副総理兼財務大臣兼金融担当大臣が初日(9日)開幕挨拶を予定しているほか、金融庁長官である遠藤氏が2日目の「金融多様化のためのマルチステークホルダープラットフォーム」セッションに登壇予定となる。他にも、同庁フィンテック室長である三輪純平氏も登壇予定。同氏が登壇したFIN/SUM2019のRegTechセッションは、以下よりご確認いただきたい。
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190912finsum03/”]アカデミアからは、先ほどご紹介した慶應義塾大学大学院特任教授 鈴木氏のほか、ジョージタウン大学 Research Professorの松尾真一郎氏も「ブロックチェーンにおける保管、セキュリティ、規制」など複数セッションで登壇予定である。松尾氏は、ブロックチェーン国際研究ネットワークであるBSafe.networkの共同設立者として国際的な学術研究をリードし、ISO TC307では、2つのテクニカルレポートのプロジェクトリーダーを務めた人物だ。OECDにおけるブロックチェーン政策エキスパートグループBEPABメンバーでもある。
FIN/SUM 2019でパネルディスカッションに登壇する松尾真一郎氏(撮影:日本経済新聞社)
ビジネス界からは、ブロックチェーン開発を手がける米R3 HoldCo LLCのデービッド・E・ラッターCEOやリチャード・G・ブラウンCTOが来日予定。ブロックチェーンの様々な用途や可能性について語る予定だという。また、同社と2019年に合弁会社を設立したSBIホールディングス株式会社の執行役員 ブロックチェーン推進室長である藤本守氏も登壇予定。さらには、株式会社TRUSTDOCKや株式会社Gincoなど、FinTechスタートアップも続々と会場入りが決まってきている。
もう一つ、大事なステークホルダーは「技術開発者」だ。今回はビットコイン・イーサリアム等のブロックチェーン・プラットフォーム・コミュニティに参加する技術者も、会場に集結するという。
産官学+技術者という、まさにマルチステークホルダーが議論する場として、当日は刺激的なディスカッションを期待して良いだろう。
チケット情報と開催概要
政府による初の主催ブロックチェーン・グローバルカンファレンス「BG2C FIN/SUM BB」は、1月28日よりチケット販売を開始している。一般価格は50,000円、学術・公務およびスタートアップ価格は30,000円、学生は15,000円である(いずれも税込)。2月8日までは、いずれも早割価格として「5,000円引き」で購入可能だ。
ブロックチェーンの国際ルール整備を主導する取り組みとして、これまでFIN/SUMシリーズに参加したことのある方はもちろん、本記事を読んでピンときた方は、ぜひ初のスピンオフ企画である「BG2C FIN/SUM BB」に参加してみていただきたい。
当日の会場でお会いしましょう。
イベント概要
- タイトル:
Blockchain Global Governance Conference -BG2C-
FIN/SUM Blockchain & Business -FIN/SUM BB-- 開催日時:
2020年8月24日(月)および8月25日(火)
2020年3月9日(月)9:00~18:30、2020年3月10日(火)9:00~18:30
- 会場:
室町三井ホール&カンファレンス
東京都中央区日本橋室町3丁目2番1号 COREDO室町テラス3階オンラインおよびオフラインで実施
※2020.6.23追記:詳細時間およびオフライン会場場所は未定
- 主催:
日本経済新聞社、金融庁- 公式ページ:
https://www.bg2c.net/- チケット情報:
https://eventregist.com/e/bg2c
編集後記
マルチステークホルダー・プロセスは、その内容だけ聞くと「あれ、そんな大したことじゃないような気がする」と思われるかもしれませんが、金融業界においてはまだ珍しいプロセスのようです。
当メディアではこれまで、AI/SUM 2019、FIN/SUM 2019、AG/SUM 2019にそれぞれ参加してまいりましたが、その面白さの要因は「良質なディスカッション」にあると感じています。
それは登壇者同士のディスカッションはもちろん、セッション間の登壇者と参加者や、参加者同士についても言えるでしょう。
ブロックチェーンって、金融やスタートアップに関係する人だけのテーマでしょ。
そのように感じている方がいるとすれば、ぜひ「BG2C FIN/SUM BB」にお越しください。
そこで話し合われていることは、最終的にあなたの身の周りに直結する内容です。
セッションの雰囲気を知りたい、という方は、ぜひ当メディアによる「FIN/SUM 2019レポートシリーズ」もご覧になってください!
(参考!)FIN/SUM 2019 レポートシリーズ by LoveTech Media
Report1. FinTechとRegTech、新しい成長の源泉へ期待高まった4日間 ~FIN/SUM 2019
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190909finsum01/”]Report2. RegTechとSupTech、その定義からポテンシャルまで要点解説
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190910finsum02/”]Report3. レギュレーション × テクノロジーが世界を変える《前編》
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190912finsum03/”]Report4. サーキュラー・エコノミーが熱い!レギュレーション × テクノロジー《後編》
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190913finsum04/”]Report5. 規制サンドボックスの現状、英国・香港・シンガポール・日本のケース
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190916finsum05/”]Report6. グリーン・デジタル・ファイナンス、環境に対する行動変容を設計せよ
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190918finsum06/”]Report7. 北欧デンマークが進めるデジタル融合社会とFinTechエコシステム
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[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190920finsum08/”]Report9. 20兆ドルマーケット狙うFinTechスタートアップが考える金融包摂
[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190923finsum09/”]Report10. 諸外国のオープンバンキング事例から考える日本のケース
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[clink url=”https://lovetech-media.com/eventreport/20190930finsum13/”]