パネルディスカッション
各々の活動紹介後、それぞれのテーマに即したパネルディスカッションが行われた。
ソフティッチ氏(モデレーター):お二人にとって、「社会善」とは何でしょうか?
スチュワート氏(メリンダ・ゲイツ財団): 社会の進化の中で、大きな善を求めるものでしょう。
例えば2011年、西アフリカでエボラ出血熱が発生しましたが、その際にテクノロジーを活用し、ビッグデータ解析を通じて行動変容によるエボラ発生への対処を進めました。
私たちはグローバル社会の一員なので、善をすることでみんな幸せになる、この意識が大切だと思います。
ベスケ氏(インテル):同じ意見です。
自分たちのコミュニティを超えて、手を差し伸べることが、社会善としての姿勢だと思っています。
ソフティッチ氏(モデレーター):大量のデータを解析とありましたが、具体的にAIをどう使っているのでしょうか?
スチュワート氏(メリンダ・ゲイツ財団):例えば画像処理や自然言語処理なんかは、ものすごいポテンシャルがあると感じています。
画像処理活用の一例として、医療現場の問題が挙げられます。
アフリカなど医療機器が充実していない地域では、生まれたての赤子の体重を計るのが難しい状況です。
そこに画像解析の技術を使うことで、ナースや母親が赤子の写真を撮って、そこから体重を推察することができます。
ソフティッチ氏(モデレーター):インテルさんでは先ほど事例を教えていただきましたが、地域的にはどこでの展開が多いのでしょうか?アフリカやアジアが多いのですか?それともアメリカでも?
ベスケ氏(インテル):世界各国ですね。
インド、アジア全体、一部のアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ。
各国に拠点を持っているというグローバル企業の強みを生かして、活動を進めています。
ソフティッチ氏(モデレーター):今回ご紹介いただいたように、テクノロジーは社会善のために使われるケースもあれば、個人や地球へ害を与えているケースもあると思います。そのような組織についてはどう思いますか?
ベスケ氏(インテル):大きな組織であれば、テクノロジーは常にプラスにもマイナスにもなり得ます。何が善で何が悪かを判断するのは難しいでしょう。
誰しも両方をやることはあると思います。
善であると思っていても、最終的に悪になることもある。
また、組織全体に対して、一人の人間が悪いことをやったからといって、そこですなわち「組織全体が悪だ」という判断を下すのも違うと思います。
むしろ何を意図したアクションだったのかチェックすべきでしょう。
スチュワート氏(メリンダ・ゲイツ財団):テクノロジーに関して、意図してない結果は普遍的事実です。
これは、技術の発明以来、ずっと続いていることです。
我々は組織として社会に何をすべきか、これを考えねばなりません。いわゆる社会的責任です。
社会善だけでなく、ネガティブな立場としてどういう害を及ぼす可能性があるかなど、なるべく多くの次元で視点をもつ必要があると考えます。
ベスケ氏(インテル):まさにそうです。新しい技術には、出来るだけ多くの意見を聞くべきです。
先生・おばちゃん・母など、あらゆる人の意見です。
ソフティッチ氏(モデレーター):最後に、社会善のために、企業は何から始めるべきですか?
ベスケ氏(インテル):自分たちの強みを生かすべきでしょう。
国連が毎年、「AI for Good(社会を良くするための人工知能)」とうサミットを主催しています。今年も5月中旬にスイス・ジュネーブで実施されました。
誰でも参画できるものです。
問題を保有してる個人や団体と、テクノロジーエキスパートとつなげてくれる場として、大変有効です。
そういったところに足を運んでみるのも良いと思います。
スチュワート氏(メリンダ・ゲイツ財団):多くの企業は、自分たちの中だけにデータを保持して、外に出さない傾向があります。
でもそれは間違いでしょう。
テクノロジーは、今現在のデータを求めています。過去のものではありません。
「データは囲い込まない」という意識を持つことです。
編集後記
今回のような、日本のみならず世界中のテクノロジー活用事例について、プラスのみならず、マイナス面・懸念点含めたディスカッションの場が、日本国内にもっと増えるべきだなと感じます。
課題先進国だからこそ、世界各国の事例を結集させ、大いに参考にさせてもらうタイミングだと思います。
LoveTech Mediaでも、本記事に登場したケニアのM-Pesaのように、海外事例も今後発信量を増やして参りたいと思います。
次回Report9では、「Society5.0時代の新しいガバナンス」についてレポートします。
お楽しみに!
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